[私たちが応援するストリートチルドレン支援NGOは今]

6月から、運営委員が分担して、現地NGOの様子を皆さんにお伝えしています。
バハイ・トゥルヤンの近況報告

共同代表・野口和恵
 3月末から新型コロナウイルス感染症が流行しているフィリピンでは、3月末にロックダウンがとられました。
 私がかつてボランティアをしていたバハイ・トゥルヤンは、マニラでストリートエデュケーション、一時保護施設、若者の職業訓練をかねたゲストハウスを運営し、ラグーナ州とケソン州では定住ホームの運営をしている団体です。
 ロックダウンとともに、マニラでの事業は中断を余儀なくされ、かわりに仕事を失い、食べるものに困っている家庭への食料支援をスタートしました。ストリートチルドレンを考える会でも、4月に食料支援のための寄付を送りました。マニラオフィスのソーシャルワーカーのエナさんの話では、今もなお仕事がない人、新たに解雇される人がいるとのこと。そのため特に貧困が深刻なトンド、デルパン、キアポといった地区で路上生活をしている家族、若者を最優先に、12月に入った現在も2週間に1度の割合で、約600世帯に配布を続けています。これまでに供給した食料パックは、8000パックにものぼりました。
 3月からは半年間にわたって学校も休校となりました。対面での授業は今も行われず、かわりに公立学校は10月5日からオンライン授業をはじめ、現在もオンライン形式での授業が続いています。これにともない、バハイ・トゥルヤンでは、10月から定住ホームに暮らす子どもたちの学習をサポートする講師として、常勤のスタッフに加え、バハイ・トゥルヤンのトレーニングを受けて大学を卒業したユースメンバーを雇用しました。ストリートチルドレンを考える会では、講師の雇用を支援するため、ユースメンバー1人あたりの約1か月分の給料にあたる、2万円を寄付しました。
 女の子たちが暮らすラグーナの定住ホームのスタッフに様子を聞いたところ、就学中の子どもは全部で38人います。その子たちの指導を常勤のスタッフ2名と新たに加わったユーススタッフ1名の3名が中心になって、行っています。機材の制約があるため、学校のオンライン授業を受けているのは4人で、残りの34人は、スタッフが用意した教材を使って問題に取り組んだのち、個別にレクチャーを受けているということでした。学習の時間は1日4時間です。
 私が昨年ラグーナの定住ホームをたずねたときは、就学前の子どもから高校生まで幅広い年齢の子どもがいました。それぞれの子どもの発達段階に合わせた学習指導を行うのはどれだけ大変だろうかと思います。
 マニラほどではありませんが、ラグーナも感染者が多い地域で、厳しい感染症対策がとられています。11月までは庶民の足であるジプニー(乗り合いバス)が通っておらず、スタッフはバハイ・トゥルヤンが用意した送迎用の車で通勤していました。現在も出勤後は、入り口付近の建物でシャワーを浴びてから施設内に入るようにしているとのことです。学校が開いておらず、教会のミサもオンラインとなった今、子どもたちは施設の外に出る機会がまったくありません。幸い、ラグーナの施設は敷地が広く、広場や畑があるので、体を動かす機会はありますが、外との交流がない今、心理的ストレスの蓄積も気になるところです。
 例年であれば、クリスマスシーズンは、家族のもとに帰れる子たちは帰省する時期でもあります。袋いっぱいの缶詰やスパゲッティをお土産にして家族のところに帰り、年明けまで家族団らんの時間を過ごすのですが、今年は感染予防のために帰省はせず、オンラインで家族と連絡をとってもらう形をとることになりました。子どもたちがどれだけクリスマスを楽しみにしていたか、子どもたちの顔を思い出すと、とても胸が痛みます。
 食料支援も、施設内での学習支援もまだまだ継続します。現地を訪ねることはまだできそうにありませんが、日本からできる支援をしていきたいと思います。

(2020年12月発行のニュースレターNo311より)

オンラインでのクラウドファンディング・プロジェクト報告会

メキシコシティとマニラでコロナ危機に苦しむ子ども・家族のいま

運営委員・伊沢 健太郎

 朝日新聞社のA-portというクラウドファンディングサイトを利用したプロジェクトにご協力いただいた方々へ、プロジェクトの結果を伝え、支援先団体からのメッセージをシェアすることを目的としたオンライン報告会を、11月14日に開いた。フィリピンとはZoomを使って、直接、現地とつながることができ、およそ50分間、ライブで双方向の意見交換を行うことができた。メキシコとは時差の関係でライブでの交流は叶わなかったが、支援先団体からの心温まるビデオメッセージと写真による現地状況の報告をした。
 メキシコシティはコロナ感染拡大の状況が、マニラ(フィリピン)よりもひどく、近々また外出規制が強化されるかもしれない状況だという。だが、NGO「オリン・シワツィン」の保育園では、子どもたちを含め,コロナ感染者は出ていない。保育園の先生方は、ほんとうに精いっぱい、ぎりぎりのところで踏ん張っていらっしゃる様子だ。親が露店商などでお金を満足に稼げない家庭の、乳幼児を含む就学前の子どもたちを預かり、食事の提供も続けている。共同代表でジャーナリストの工藤さんと、運営委員でフォトジャーナリストの篠田さんが、来月、現地を訪問し、報告してくれる予定なので、状況をより細かく知ることができると期待している。
 さて、フィリピンの首都マニラとは、Zoomを使ったライブ中継のような形になったが、正直、私はこれには驚いた。録画したものを見たり、報告文を読んだりすることで状況を理解することももちろんできるが、インターネットを通してのライブ中継は、テレビ中継とも違った双方向のやりとりに参加でき、より躍動感のあるやり取りを感じ取ることができた。支援先NGO「カンルンガン・サ・エルマ・ミニストリー」のウイルマーさんというソーシャルワーカーの方が現地でレポーター役となり、子どもたちや家族の方たちにインタビューし、それを会共同代表の工藤さんが同時通訳をしながら意見交換する様子を、一緒に体感できたのは、貴重な経験になったと思う。
 マニラでも、コロナ渦で満足に食料が確保できなくなっている事情を鑑み、子どもたち、その家庭への食料支援が続けられている。その中で、小学6年生くらいの男の子にインタビューした際、開口一番、「I am Happy(僕は幸せだよ)」と言っていたことが忘れられない。その男の子は家族と離れて親せきと暮らしていて、パンデミック以前は母親が時々会いに来てくれたが、今は移動制限で会えないことがさみしいと話していた。参加者から、食事は一日に3度食べられているか、という質問がされると、食べられている、との返事。ただ、子どもたちは「3度」食事できていたとしても、栄養は足りていない。だから、継続して支援しているということを、カンルンガン・サ・エルマ・ミニストリー代表のソルさんが、補足してくれた。
 おそらく、映像からは見えてこない、私たちには想像もつかない辛いことも、いろいろとあるのかもしれない。でも、総じてI am Happy(僕は幸せだよ)と笑顔で応えてくれた少年に、私だけでなく、参加した多くの方が逆に元気をもらったのではないだろうか。支援をきっかけに人とつながり、そのつながりを通して元気を与え、元気をもらえる。シンプルなことだが、みんなで生きていくうえで、大切なことだと思う。報告会では、そうしたことを学んだ。

(2020年11月発行のニュースレターNo310より)