メキシコシティとマニラでコロナ危機に苦しむ子ども・家族のいま
朝日新聞社のA-portというクラウドファンディングサイトを利用したプロジェクトにご協力いただいた方々へ、プロジェクトの結果を伝え、支援先団体からのメッセージをシェアすることを目的としたオンライン報告会を、11月14日に開いた。フィリピンとはZoomを使って、直接、現地とつながることができ、およそ50分間、ライブで双方向の意見交換を行うことができた。メキシコとは時差の関係でライブでの交流は叶わなかったが、支援先団体からの心温まるビデオメッセージと写真による現地状況の報告をした。
メキシコシティはコロナ感染拡大の状況が、マニラ(フィリピン)よりもひどく、近々また外出規制が強化されるかもしれない状況だという。だが、NGO「オリン・シワツィン」の保育園では、子どもたちを含め,コロナ感染者は出ていない。保育園の先生方は、ほんとうに精いっぱい、ぎりぎりのところで踏ん張っていらっしゃる様子だ。親が露店商などでお金を満足に稼げない家庭の、乳幼児を含む就学前の子どもたちを預かり、食事の提供も続けている。共同代表でジャーナリストの工藤さんと、運営委員でフォトジャーナリストの篠田さんが、来月、現地を訪問し、報告してくれる予定なので、状況をより細かく知ることができると期待している。
さて、フィリピンの首都マニラとは、Zoomを使ったライブ中継のような形になったが、正直、私はこれには驚いた。録画したものを見たり、報告文を読んだりすることで状況を理解することももちろんできるが、インターネットを通してのライブ中継は、テレビ中継とも違った双方向のやりとりに参加でき、より躍動感のあるやり取りを感じ取ることができた。支援先NGO「カンルンガン・サ・エルマ・ミニストリー」のウイルマーさんというソーシャルワーカーの方が現地でレポーター役となり、子どもたちや家族の方たちにインタビューし、それを会共同代表の工藤さんが同時通訳をしながら意見交換する様子を、一緒に体感できたのは、貴重な経験になったと思う。
マニラでも、コロナ渦で満足に食料が確保できなくなっている事情を鑑み、子どもたち、その家庭への食料支援が続けられている。その中で、小学6年生くらいの男の子にインタビューした際、開口一番、「I am Happy(僕は幸せだよ)」と言っていたことが忘れられない。その男の子は家族と離れて親せきと暮らしていて、パンデミック以前は母親が時々会いに来てくれたが、今は移動制限で会えないことがさみしいと話していた。参加者から、食事は一日に3度食べられているか、という質問がされると、食べられている、との返事。ただ、子どもたちは「3度」食事できていたとしても、栄養は足りていない。だから、継続して支援しているということを、カンルンガン・サ・エルマ・ミニストリー代表のソルさんが、補足してくれた。
おそらく、映像からは見えてこない、私たちには想像もつかない辛いことも、いろいろとあるのかもしれない。でも、総じてI am Happy(僕は幸せだよ)と笑顔で応えてくれた少年に、私だけでなく、参加した多くの方が逆に元気をもらったのではないだろうか。支援をきっかけに人とつながり、そのつながりを通して元気を与え、元気をもらえる。シンプルなことだが、みんなで生きていくうえで、大切なことだと思う。報告会では、そうしたことを学んだ。
(2020年11月発行のニュースレターNo310より)