メキシコ・ストリートチルドレンと出会う旅 2022【参加者の声から】

山﨑 夏帆(専修大学3年) 

 世界で起きている現実について、私は知らないことがあまりにも多すぎた。メキシコに行き自分の目で確かめて、改めてそう感じた。 

 私たちはメキシコに滞在している間、複数の施設を訪れた。どこに行っても子どもたちは温かく優しく迎え入れてくれた。活動初日にみんなで行ったピクニックでは、子どもたちが遊具で元気に遊んでいた。あまりの元気さと無邪気さに、自分の体力の無さを痛感した1日だった。日本よりも凝った遊具がたくさんあり、ここは子どもたちが全力で体を伸ばすのに最適な場所だと感じた。ある1人の女の子は高いところが苦手らしく、はじめは遊具から降りるときに泣きそうな表情をしていた。しかし、何度も遊具から登り降りていく中で、最後には手を貸さずとも1人で降りられるようになっていた。小さな動作かもしれないが、誰かの成長に立ち会えた瞬間であり、私の心に残っている。

 人懐っこく、明るい印象が強い子どもたちだが、施設で出会った子の多くは、親からの愛情を受けたことがない。背景は様々だが、子どもたちの多くが家庭内暴力を受けていたり、社会的に置き去りにされていたりといった過去を持っている。私が見ている今の子どもたちと、経験してきたことの過酷さとのギャップに戸惑いが大きく、信じられない気持ちになった。 

 NGO「プロ・ニーニョス・デ・ラ・カジェ」のストリートエデュケーターの方と行った地域には、私と同じくらいの年代、あるいは年下の子たちがシンナーを吸っている場面に遭遇し、正直「怖い」と思ってしまうような光景を目の当たりにした。しかし、彼らは私が感じた何倍も怖い思いをしているのだと思う。私たちがただ怖いと思うだけで済ませてはいけない現実が、そこにはあった。

 路上に出る理由になった過去、薬物に頼って生きていくしかない現実。いつこの場から追い出されるかわからない状況で、誰に頼ればよいのか、誰に救いの手を求めればよいのかわからない恐怖は、到底子どもたちが抱えてよい感情ではないと思う。どの施設でも耳にした「子どもの権利」を奪われてしまった彼らの顔が、頭に残っている。 

 「問題は大きいのに解決策は少ない」

 娼婦をしている1人のお母さんが、そう言っていた。彼女は自身が幼い頃に父親の戚に預けられるも、15歳で家を出て、それから1人で生きてきたそうだ。誰も彼女のような女性の背景や、娼婦として働くことがどれだけ大変で辛いものかを知ろうともしないのだろうと感じた。だから、「楽に稼げる」、「やりたくてやっている」といった言葉を吐けるのだと思う。13歳という若さで63歳の男性との子を妊娠した少女、売春婦として露店の前に並ぶ女性、いつ殺されてもおかしくない環境で生きている女性たちがいること。「女性」であることを理由に騙され、搾取され、1人の人間としての尊厳を失ってしまう世界を初めて見た。とても悲しく深刻で、言葉にはできない思いでいっぱいになった。 

 私たちが訪問した施設が子どもたちにとってどれだけ大きな存在で、大切な場所であるか、身に染みて感じた。親からの反対や施設になじめるかどうかなど、高い壁が あることも痛感した。子どもたちと真摯に向き合い、愛情を注ぎ、「やらねばならない」という強い気持ちを持ったスタッフの方々を、私も見習わないといけないと思う。 

 出会った子どもたちには、危険にさらされることなく、自分らしく生きてほしい。一緒に過ごしたわずかな時間がみんなの記憶に残り、自分を、人を大切にする気持ちに繋がればよいなと思う。この貴重な経験を踏まえて、自分に何ができるかもう一度考え直したい。 

 最後になりましたが、今回沢山の学びを得ことができたのは工藤さんと篠田さんのおかげです。お二人の長年の活動があったから、知らなかった多くの現実を知ることができました。本当にありがとうございました。 
 

●浅川 桃香(専修大2年)

 「ストリートチルドレン」という言葉を聞いて、過去の私であったら「路上で暮らすかわいそうな子ども」と考えていました。しかし、大学で狐崎知己先生のNGO論の授業を通して貧困やストリートチルドレンについて学び、そのような言葉だけで言い表していいのだろうか、文字だけでは伝わりきれない何かがあるのではないか、実際に現地に足を踏み入れ、自分の目で確かめたいと思い、このメキシコツアーに参加しました。

 施設に行く前は、子どもたちにどのように接していいのか、どんな質問をしていいのかと、不安に思っていましたが、そんな考えは一瞬で吹き飛ぶくらいに無邪気で笑顔の子どもたちの姿に、驚かされました。言葉もよく通じない遠い国から来た私たちと、興味津々の眼差しで交流しようとする様子に答えたくなり、スペイン語をもっと勉強しようと思いました。そのような子どもたちと関わっていくうちに、ここにいる子たちには施設に来なければならなかった背景が必ずあるのだということを、考えさせられました。施設だけでは変えられない現状はあるとは思いますが、ここにいる子どもたちが少しでも前を向いて成長し、自立した生活を送れたらいいな、と思いました。

 路上活動に参加したときに驚いたことは、路上で生活している人たちが私たちに対して、とてもオープンに接してくれたことです。私だったら、自分の生活の様子を異国の人々に観察されると思っただけで、嫌悪感を抱き、あまり歓迎したいとは思いません。が、今回話を聞かせてくれた人たちは、私たちの質問に嫌な顔もせず、丁寧に答えてくださり、驚きました。これは、日ごろから路上で活動しているストリートエデュケーターの方との信頼関係があるからこそだと、感じました。

 また、ストリート暮らしをしている人の中でも、暮らし方は様々だということを知りました。グループ間の喧嘩によって場所を移動し、廃ビルの下で暮らしている人、先住民族コミュニティの中で、雨風を凌げるブルーシートなどを活用して暮らしている人、仲間で助け合いながら暮らしている人など、生活スタイルも気持ちの状態も、様々でした。腕や足に幾つかの刺し傷がある人もいて、「路上生活している人」という言葉で一括りにすることはできないと感じました。

 路上活動での移動中に、一人の路上暮らしの男性がストリートエデュケーターに話しかけ、「女性と連絡が取れなくなった。もし会ったら連絡してほしい」と頼んでいました。ストリートエデュケーターがこのように頼りにされ、人との繋がりを築いていることを実際に見て、ストリートで暮らしている人にとってのストリートエデュケーターの大切さも知ることができました。

 このツアーで一番印象に残っているのは、NGO「オリン・シワツィン」の保育園に子どもを預けている娼婦の女性の話です。本や資料でしか今まで耳にしないようなことが現実に起きてしまっていることを、実感しました。女性が目に涙を浮かべて過去のこと、今の状況、将来の不安を口にしていて、私はとてもショックを受け、私が彼女と同じ状況にあったらと想像することもできませんでした。問題はこんなにも大きいのに抜け出す手段がなく、また周りから非難されるのが当たり前の状況ができあがってしまっていることに、衝撃を受けました。その女性は、今は「オリン・シワツィン」がとても支えとなっていると話しており、少し安心しました。子どもだけでなく、その家族にとっても、こういったNGOはとても大切な役割を果たしていることに気づかされました。

  このツアーを通していろんな施設に行きましたが、どの団体のスタッフの方も、子どもに対する愛情や熱意が強く、子ども目線で物事を考えているところを、深く尊敬しました。支援として、ただ単にお金を使うだけではなく、愛情を注ぎ、その子が自立して自分の権利を取り戻せるようになることが重要であると学びました。

 このツアーでは本当にいろんな学びや出会いがあり、私の人生で大きな意味のある10日間となりました。実際に目で見て感じたからこそ学べたことを、ただ心にとどめておくだけでなく、何かしらの形で発信していきたいと思います。

 最後になりましたが、コロナ禍にこのツアーを開催してくださり、私たちのサポートをしてくださった工藤さん、篠田さん、通訳の方々に感謝しています。本当にありがとうございました。

フィリピン・ストリートチルドレンと出会う旅2020報告会(オンライン)

フィリピンのマニラ首都圏には、路上に暮らすストリートファミリーや、家を飛び出し路上生活をおくる子どもたち=ストリートチルドレンが大勢います。彼らは、どうしてそんな暮らしをしているのでしょう。どんな毎日を送っているのでしょう。何を必要としており、実際にどのような支援が行われているのでしょう。

彼らが暮らす地域では、3月半ばから5月末まで、コロナ危機による都市封鎖状態が続きました。それは路上の子どもたちやその家族に、どんな影響を与えたのでしょう。

3月第1週に、マニラ首都圏でストリートチルドレンを支援する現地NGO5団体を訪れたスタディツアー「フィリピン・ストリートチルドレンと出会う旅2020 」の旅の案内人と参加者が、路上の人々の現実と、コロナ危機下での問題をお話しします。
★現地の路上で支援活動を実施するNGOスタッフとのライブ通信も予定。 
日時  6月14日(日)午後4時〜6時
        Zoomを使ってのオンライン報告会です。
        午後3時50分くらいから入ることができます。 
参加費   無料
申し込み 1人1通のメールで、氏名と「ツアー報告会参加」と書き、
       info@children-fn.com へ送信してください。
       報告会の数日前にZoomに入るためのリンク&注意事項を
       お送りします。
問合せ    上記のメールアドレスへ。