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ニュースレター

一年間のフィリピン・ボランティアを振り返って

2015/01/14 15:06:13 ニュースレター
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ストリートチルドレンを考える会

運営委員・市川泰子 

先月の初めに、フィリピンのストリートチルドレン支援NGO である「チャイルドホープ・エイジア・フィリピン(以後、チャイルドホープ)」での約一年間のボランティアを終えて、帰国しました。今回は、その経験全体を通じて、学んだことや感じたことを中心に書きたいと思います。子どもたちのこととは直接関係はないのですが、ボランティアをしていて体験的に学んだのは、「一緒に食事をしたり、踊ったり、何気ない時間を共有することの大切さ」です。初めて事務所に行き始めてから、スタッフたちと打ち解けていく過程で、今思い返してみると、2 つ、重要なことがありました。

 

チャイルドホープでは週に一回、「バイブルシェアリング」といって、聖書から引用してきた内容について、スタッフの間で意見をわす時間が用意されていました。私はクリスチャンでもないですし、ボランティアだったので、必ずしも参加する必要は無かったのですが、ボランティアが始まった直後は、それだけには必ず出席していました。言葉も不自由で、仕事の手順から何から、何もわからない状況でしたが、その場では、自分の今までの経験や自分の考えや価値観を話すことができ、私のカタコトの英語でも、参加しているスタッフは、じっくり耳を傾けてくれました。過去にあった腹が立った出来事とそれにどう対処したのか、エデュケーターとしての使命感など、いろいろなことを話しました。基本的に現地の言葉・タガログ語で話しているので、ほとんどわからないことも多かったのですが、それでも、その時に一生懸命に話し合いに加わろうとする姿勢を見せたことで、スタッフとの心の距離がぐんと縮まったと思っています。

 

2 つ目は、クリスマスパーティーでダンスをしたことです。事務所のクリスマスパーティーでは、毎年恒例で、スタッフたちが出し物をすることになっているため、12 月中は仕事の合間に、エデュケーターたちがその練習をします。私もそれに混ぜてもらって一緒にダンスの練習をし、当日は全スタッフの前で発表しました。終わった後に、ペアで踊った女性スタッフと、「楽しいけど、やっぱりちょっと恥ずかしかったわよね?」と照れ笑いを含んだ目配せを交し合いました。そのときに、言葉は無いけれど、心が通い合った確信のようなものがあり、それから、そのスタ

ッフとはとても仲良しになりました。


私の滞在時期と重なって、およそ5 ヶ月間、ベルギーからインターンシップにきた女性がいたのですが、彼女は、スタッフとのコミュニケーションは必要最低限で済ませ、いつも事務所の部屋で一人、PC に向かって作業をしていました。根っから陽気な性格のフィリピン人も、彼女のようにはっきりとプライベートと仕事を分ける態度を出すと、無理に入り込んでいきません。結局、彼女がいつベルギーに帰国してしまったのかも、エデュケーターたちは知らないという状況でした。彼女には彼女の目的があったのだと思いますが、せっかく同じ場所にいるのに、あまりよ

く知り合うこともできず、寂しい思いをしました。

 

楽しい時間を一緒に楽しむ、作り上げるという、仕事やボランティアとは関係のない部分での関わりによって、短時間での訪問や調査では作ることのできない絆ができたと思います。そして、フィリピンの人たちは、人生のこういう部分をとても自然に大切にしていると思います。お菓子を持っている時は、必ず「一緒に食べよう」と声をかけてくれたり、家に夕食に招待してくれたり、待ち合わせ時間に間に合わなくても気長に待っていてくれたりと、とにかく話をするなど、人と時間を共有することが多かったと思います。

 

「no private(私生活がない)」、「仕事中におやつを食べてばかりいる」、「スケジュールは時間通りに進むことがない」と揶揄する人もいますが、逆にそんなに目的通り、時間通りに進めていく必要が本当にあるのかということが、改めて問われます。仕事の時間を削って実施しているバイブルシェアリングでは、スタッフの人間関係で気になっていることや上司への不満なども、時々聞かれました。こういうところでちゃんと意思疎通をして、ストレスがたまらないようになっているのだと思いました。

 

シェアして理解しあうという過程や行為は、一見、非効率で余計なもののように見えるのですが、フィリピンでは円滑に物事を進めていくための知恵として、人々に根付いているものなのだろうと思いました。支援の現場でも、単に支援を配るというのではなく、シェアすることが根底にあるように思います。クライアントのお母さんたちが輪になって笑いあったり、子どもたちが輪になって座って考えを言ったり、というシーンを何度も目にしました。

 

予定や規則や決まり事よりも、その場に一緒にいる人との関係を大切にしているフィリピンの人たちの生活に浸り、私も以前よりも、考え方や人柄がやわらかい人間になれたかな、と思います。      

(いちかわ やすこ・大学院生)

 

(2013年12月発行のニュースレターNo227より)