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ニュースレター

チードなまいにち

2017/02/28 19:22:03 ニュースレター
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ストリートチルドレンを考える会

運営委員・高橋 茜

 わたしは現在、メキシコシティにある「プロ・ニーニョス・デ・ラ・カジェ(以後、プロ・ニーニョス)」というNGOが運営する定住施設で、ボランティアとして働いています。考える会のメキシコ・スタディツアーで同団体を訪れたことがきっかけで、今は週5日、朝から夕方まで働いています。同団体は、メキシコシティの路上で生活、あるいは1日の大半を過ごしている少年たちが、より良い人生を選択できるように活動しています。定住施設は、路上での生活をやめ、自立した生活を営むことを決断した少年たちが一時的に生活する施設で、「カサ・デ・トランシシオン(移行のための家)」という名前で呼ばれています。通常2〜3人のエデュケーターが常在し、少年たちの生活を見守ります。少年たちは、それぞれ仕事や学校に通っており、施設は文字通り、「家」の役割を果たしています。家の中で役割分担があるように、わたしたちの施設でもそれぞれに役割があり、掃除や整理整頓がしっかりと個人の責任で行われます。

 

 先日、「家」が果たす役割について考えさせられる出来事がありました。朝出勤すると、いつもは痛いくらい力強く握手をして挨拶をしてくるダビ少年が、全く元気がなく、朝食にも手をつけずに、体の調子が悪いと訴えていました。早く病院に行かなくては、と他のエデュケーターと少し調子の悪そうなもう一人の少年と一緒に、近所の病院に行くと、ダビは感染症にかかっていることが判明。処方箋をもらったはいいものの、近所の薬局には薬の在庫がなく、何軒もまわってやっと薬を手に入れました。薬を飲むとだいぶ症状が軽くなるようで、数時間後には起きて果物を食べられるほどまで回復しました。これは、日本に住むほとんどの人には普通のことかもしれません。病気になったから、病院に行って薬をもらう。その薬を飲んで回復するまで休む。一見当たり前のことですが、路上に生活する子どもたちにとっては、そうではありません。定住施設には、病気になった少年のことを心配する他の少年たち、肩を貸して一緒に病院まで付き添うエデュケーターがいます。これは、家族や親しい人々が構築する「家」に代表される関係に、とても似ているのではないかと思いました。

 

 周りの人々が病気を治すためにしてあげられることは、ほとんどの場合、あまりありません。しかし、少しのことしかできない場合でも、「心配している」という気持ちを感じることが、どれだけの違いを生み出しうるかということに、気づかされました。それは、路上生活では感じることが難しい、「自分は大切にされている」という気持ちであり、「自分には人間としての価値がある」という実感なのではないかと思います。

 

 プロ・ニーニョスには、路上生活を送る子どもたちが昼間だけアクティビティに参加しにくるデイセンターがあります。そのデイセンターの壁には、2つの文章が書かれています。¨Los niños no son de la calle, son nuestros¨ (子どもたちは路上に属するのではなく、わたしたちの子どもたちだ) 、そして、¨El niño merece más que la calle¨ (子どもには、路上以上にふさわしいものがある=路上暮らしではない、まともな生活をできるのが当然である) というものです。子どもたちが、どれほどの実感を持って施設でそのように感じているかは、知るすべもありませんし、子どもたちに物理的な「家」を用意してあげることが、わたしたちの仕事というわけでもありません。しかし、わたしたちが毎日積み重ねるようにできることは、子どもたちのための仕事をしている時に、「わたしたちにとって、子どもたち全員がとても大切である」という気持ちを添えることではないかと、感じています。それは、エデュケーターや調理のおばさん、そして子どもたちみんなで大きな家を作るようなものではないかと思います。例えば、わたしはメキシコシティに知り合いはほとんどいないし、家では一人寂しく過ごすしかありませんが、施設で働いている時は、自分が大きな家族の一員となったような気持ちで働くことができています。子どもたちは少しのことでも、感謝の気持ちを言葉にしてくれるし、わたしたちもそのようにしています。目には見えないものですが、一人ひとりが少しずつ持ち寄って大きなものを作っている、そんな感覚があります。

 

 メキシコシティでは、観光地とは程遠い環境で生活していますが、先日は久々に観光客に紛れ、チャプルテペック城内の国立博物館に行ってきました。チャプルテペック城は、メキシコ皇帝であったマキシミリアーノが住んでいた城で、現在は周りを取り囲む公園とともに保護されています。そこにはメキシコ革命時の洋服や絵なども飾られており、さながらメキシコの歴史の教科書の中に入ったようです。そこで見つけたのが、ある絵の写真です。国境は描かれておらず、それぞれの地域の特色を交え、先住民の人々の暮らしの様子が描かれています。この絵や毎日の新聞を眺めながら、現在の国境や一つひとつの国々の保護主義的な政策に思いを巡らせ、国同士が共存する関係を築くにはどうしたらよいのか考える毎日です。

(2017年2月発行のニュースレターNo265より)