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ニュースレター

仲間を搾取から守りたい/JFCノリの挑戦

2016/12/27 10:21:37 ニュースレター
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ストリートチルドレンを考える会

共同代表 野口 和恵

 マニラで、日本とフィリピンの血をひく男性“ノリ”が、日本にいるフィリピン人コミュニティのためのWEBサイト(http://juaninjapan.com/contribute/)をつくる準備をすすめている。彼は、マニラでウェブサイト運営や商業デザインを中心とする会社を経営している。社員は数名だが、20代という若さで成功をおさめた実業家である。

 

 ノリは、ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレンだ。ノリの母親はマニラの貧困層の出身であり、若いときに日本に出稼ぎに渡った。そこで知り合った日本人男性との間にもうけた子どもが、ノリだった。母がフィリピンへ一時帰国した際に、ノリは生まれた。以来、ノリは祖母に育てられた。母は日本へ戻って働き、送金をつづけていたが、日本人の父親について語られることはなく、消息もわからなかった。「父親のことを知りたい」。そんな思いを抱えたまま、大人になった。

 

 ノリのように日本人の父親から養育放棄されたジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン(JFC)は、在比ケース、在日ケースあわせて10万とも20万ともいわれている。日本がバブルに湧き、あちこちにフィリピンパブが林立していた1980年代以降、日本に出稼ぎにきたフィリピン人女性と日本人の男性の間に生まれる子が増えたことが、背景にある。フィリピン国内にも日本人男性を相手とした歓楽街が広がり、そこでも男女の出会いがあった。結婚し幸せな家庭を築いたケースもあるが、父親のことを一切知らないまま大人になったJFCが、日本から見えないところで生きているのも事実である。

 

 こうしたJFCを支援する団体が、フィリピン国内にいくつかある。大人になったノリはこれらの団体をたずね、同じような思いを経験してきた青年たちと交流を重ねてきた。ノリはときどき自宅をかねたオフィスにJFCの友人をよび、自分たちの課題について話しあい、きずなを深めるためのパーティを開いている。

 

 ノリ自身も会社を立ち上げるまで、生活面でも精神面でも大変な苦労があった。しかし、ノリは交流をとおして、JFCのなかにはもっと過酷な人生をたどってきた者がいることを知った。小学校さえも卒業できなかった者もいたし、フィリピン人の実母にも捨てられ、路上で生きてきたという者もいた。

 

 そんなJFCたちも機会に恵まれれば、力を発揮し、よい仕事につけるのではないかと、ノリは感じた。そこでノリは自分の会社のなかで同胞の職業訓練と雇用の機会をつくった。しかし始めてみると、ノリは彼らとの接し方に悩んだ。成長の過程でさまざまな機会が欠落してきた彼らには、仕事の前に簡単な規則を守ってもらうことも難しかった。それを理解する専門性のある人間でなければ、彼らの教育はむずかしいと気づいた。会社もうまく回らなくなったため、ノリは彼らと長く話し合った末、別の簡単な仕事につくことをすすめた。ノリは今でも彼らのポテンシャルを信じている。ただそれを生かすには、適切な訓練と指導を受けて、規律を持つことが必要なのだ。   

 

 今年7月、ノリは日本に行くチャンスを得た。日本の支援団体らから、スピーカーとして招待を受けたのだ。これは「移住者と連帯するネットワーク」が、トヨタ財団の助成を受けておこなった「安全な移動と定住」プロジェクトの一環だった。現在、日本は技能実習制度をはじめ、さまざまな形で外国人労働者を呼びこみ、介護や製造業での人手不足解消、コスト削減をはかろうとしている。日本人の父親から生まれたJFCは、父親からの認知があれば在留資格をとりやすく、なかには日本国籍を取得しているものもいる。外国人労働者を日本の会社に仲介するエージェントはこれに着目し、フィリピンで積極的なリクルート活動をおこなっている現状がある。「日本に行ってお父さんに会いたい」といったJFCの気持ちを利用し、日本で働けば父親さがしを手伝ってあげるといって、劣悪な労働環境に送りこむエージェントも存在する。こうした現状を調査し、日比でアドボカシー活動をおこなうことによって被害の拡大を防ぐのが、このプロジェクトの目的だ。

 

 ノリはまだ見ぬ父親の国を訪れ、自分の生い立ちを赤裸々に語った。会場には、涙を流しながら聞く人の姿がめだった。この旅を通して、ノリは実際に日本で搾取されてきたフィリピン人女性たちに会い、労働の現場を見学した。また、日本の貧困問題に取り組む人々にも会い、日本の社会のなかにも格差が広がっていることを知った。

 

 フィリピン人女性やJFCが日本の社会の現状や法律を知らないために、安価な労働力として利用されている。そう感じたノリは、フィリピン人が自分たちの権利についてさまざまな情報を得られるリソースが必要だと感じた。冒頭に紹介したウェブサイトは、この経験から企画したものだ。

 

 現在は試作ページのみだが、今後、日本語と英語での情報発信をしていきたいと考えている。現在、このウェブサイトの制作に協力してくれるライターや翻訳者を募集中だ。また、運営資金を出してくれる広告主もさがしている。

 

 興味のある方は、ぜひhello@juaninjapan.comに問い合わせを。

(2016年10月発行のニュースレターNo261より)