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ニュースレター

映画紹介コーナー「風の波紋」

2016/03/11 20:31:47 ニュースレター
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ストリートチルドレンを考える会

映画紹介コーナー

風の波紋

小林 茂・監督ドキュメンタリー/99分

2016年3月16日より全国ロードショー

紹介者・松永健吾(運営委員)

 小林茂監督(以下小林監督)とは、一昨年5月、NPO法人ぱれっと主催のイベント「ケニアのストリートチルドレンと共に」で、初めてお会いしました。当会の工藤律子さんと篠田有史さんともお知り合いだったため、同じ年の7月に当会で開催した、ケニアのストリートチルドレンを追った小林監督のドキュメンタリー映画「チョコラ!」の鑑賞会に、スカイプでご参加いただきました。今回の映画とは対照的に、アフリカの強い日差しの中、とても躍動感のある映画でした。過酷な状況の中で生きるケニアのストリートチルドレンの子どもたちの苦悩と同時に、逞しさを感じました。小林監督は、映画「チョコラ!」の撮影の際、腎不全の病を押して、人工透析を受けながら撮影に臨まれたそうです。

 昨年12月に、小林監督から新作ドキュメンタリー映画「風の波紋」の試写会のご案内をいただき、観に行かせていただきました。私は現在ある大学で、持続可能な社会について実践を通して学んでおります。学生たちと一緒に無農薬のお米や野菜を作ったり、飼っている鶏を絞めたり、丸太小屋作りをしたりしています。そのため、今回の映画には大変関心がありました。会場の入口では、小林監督自ら、来場者の皆さんお一人お一人に元気良く挨拶をされていました。試写会終了後、会場から少し離れた懇親会会場へ皆さんを誘導される際も、小林監督が自ら先頭に立って、渋谷の街のど真ん中で大きな声を張り上げて、案内をされていました。「重病を患われている筈なのに、どうしてこんなに元気でいらっしゃるのだろう?」と不思議に思いました。今回の映画「風の波紋」もまた、人工透析を受けながら撮影に臨まれたそうです。小林監督に「お元気そうですね!」とお声掛けしたところ、「全然そんなことはないんだ。」と、意外なお返事が返って来ました。その時、「撮りたい映画があるから生きているのだ」という、気迫のようなものを感じました。

 前置きが長くなってしまいましたが、今回の映画の舞台は、新潟県の長野県境に近い越後妻有(えちごつまり)と言う豪雪地帯の里山です。小林監督も新潟県の山村で生まれ育ったそうです。この場所を選ばれたのは、子どもの頃見た原風景と重なったためだそうです。都会から移住して来た人と地元の人が、お互いに助け合いながら暮らしています。古民家の藁葺き屋根の修復を協同で行なったり、放置されていた棚田で皆と一緒に無農薬のお米作りをしたり、山桜で草木染をした糸で着物を織ったり、大雪の時は協力して雪下ろしをしたり、自分たちで育てた肉や野菜で、仲間と共に囲炉裏を囲んで自慢の歌を披露したり、今では殆ど見られなくなった、昔の結(ゆい)と呼ばれる相互扶助の関係がゆるやかに息づいています。映画の登場人物は個性的な人ばかりで、皆活き活きとしていました。映画の解説の中で小林監督は、渡辺京二著「逝きし世の面影」という江戸時代後半から明治にかけて、外国人によって書かれた日本人像が紹介された本の文章を引用されています。当時の日本人は貧しいけれども貧相ではなく、子どもを可愛がり、よく笑い、その風景は美しいとあります。そしてそのような文明は滅びたと言うものです。映画を観て、人間らしい暮らしとはこういうものなのではないかと感じました。

 映画の中で、飼っている山羊を屠るシーンがありました。私も先日飼っていた鶏を屠る体験をしたので、共感する部分が多々ありました。人間は他の生き物の命を食べて生きているのだという、当たり前のことに気づかされました。昔は田植えや稲刈り、茅葺屋根を葺く時など、村人総出でお互いに助け合って作業をしていました。現代社会はそうした人間本来の営みや暮らしが減ってしまいました。自然や暮らしの中にある、人間のぬくもりを感じる映画です。この映画は、私たち自身の生活を見つめ直す良い機会になるのではないかと思いました。全編を通して、心地良い風が吹いているような清清しさを感じる映画です。よろしければ、ぜひ劇場でご覧になってください。

 映画「風の波紋」公式サイト

(2016年2月発行のニュースレターNo253より)