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ニュースレター

あるフェイスブック投稿が伝えたマニラの児童福祉

2015/01/23 23:30:53 ニュースレター
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ストリートチルドレンを考える会

運営委員・野口和恵

 写真の少年は生きている。しかし、だれも彼の年齢、住所、家族、本当の名前を知らない。最初に彼を見つけた警官がフレデリコと呼んだことから、そのようによばれている。

 

 フレデリコは、マニラ社会福祉省によって運営されている施設、レセプション・アンド・アクションセンター(RAC)のスタッフによって、とらえられ、路上から連れてこられた。この写真は、路上で撮られたものではない。彼がRACに来て、7か月経過した、10月12日に撮られたものだ。この写真は、フェイスブックに公開されている。

 

 この写真を撮影、投稿したのは、NGO「バハイ・トゥルヤン」(会が支援している現地NGO)。オンライン上に写真をアップしたほか、画像データをアキノ大統領、元大統領・現マニラ市長エストラーダ、司法省、社会福祉開発省、人権委員会に送った。

 

 「いまだ彼らからの返事はありません」と、同NGOのキャサリン・シェリーは言う。「私たちは、6年前からRACの改善を求めて政策提言してきました。けれども、何も変わっていません」。

 

 同NGOは、フェイスブック上で次のように述べている。

 

 「RACの中の状況は、劣悪だ。子どもたちは、何のケアもなくただ監禁されており、犯罪よりも恐ろしい行為にさらされている。彼らはもっとも基本的な権利が保障されていない。適切な食事と衛生的な水、寝具、衣服。子どもたちは、家族と連絡を取ることもできない。そればかりか、自分の子どもがRACの中にいることを家族が知らないという場合も、よくある」

 

 RACは夜間、路上で歩いている子どもを無差別に車に乗せ、施設に連れていく。そのため、子どもだけで路上暮らしをしている場合に限らず、家族がいる子どもも、突然力まかせにRACに連れていかれる場合がある。この際にスタッフから暴力をふるわれたり、金銭をとられたりする子どももいる。詳しくは、「バハイ・トゥルヤン」が2009年にまとめたリポートにも明記されている。

          http://child-to-child.com/date/2012/10

 

 多くの場合、子どもたちは、なぜ自分がRACにいるのかを知ることさえ、かなわない。表向きの理由として、スタッフは次のようなことを挙げる。夜間外出禁止令(治安維持の目的から自治体単位で決められている)を破って歩いていたから。非行行為への罰則。身体的に危険な状態にあると判断したから、などだ。しかし、軽犯罪を犯した子どもと、適切なケアが必要だからという理由で連れてこられた子が、同じ場所に入れられている現実がある。

 

 「バハイ・トゥルヤン」は、マニラ市に、RACでの生活の早急な改善、もしくはフィリピン社会福祉開発省の基準を満たすまでの施設閉鎖を要求している。ネット署名サイトchange.orgを利用して、請願書の署名活動をはじめ、10月28日までに1000人の署名が集まっている。

 

 「もしRACのような施設について苦情が出ているのであれば、食事の改善をし、適切な運営につとめ、暴力的な職員は解雇もしくは訓練を受けるようにしなければならない」。社会福祉省のソリマン長官は、10月29日水曜日の路上生活者に関する会議で、そうコメントした。そのうえで、「マニラ首都開発庁も、センターの改善に協力することができる。もしRACがいっぱいであれば、ここ(マニラ首都開発庁の一時宿泊施設のことか?)にいることができる」と付け加えた。

 

 RAC側は、この施設はドメスティック・バイオレンスの被害者や、不運にして路上生活をしている人のための一時保護施設としてつくられたものだ、と述べている。RACが最初に介入したのち、子どもたちは、よりよい生活ができる別の施設へ移している。受け入れ先としては、政府の住宅や、社会福祉開発省やNGOが運営する施設がある、と説明している。

 

 RACは、30年前から運営されており、責任者のグロリア・アントニオによると、三つのセクションに分かれている。18歳未満の青少年、大人の路上生活者、ストリートチルドレンと特別なケアを必要とする子ども。RACの中には、非行少年を受け入れる、マニラ・ユース・レセプションセンターがある。

 

 「私たちの許容人数は50人です。しかし、ときには利用者が250人に達することもあります。子どもたちを受け入れてくれる施設が、ほとんどいっぱいで見つからないために、超過滞在をしているのです」と、アントニオは言う。ふつうは3日から5日だけの滞在だが、数か月滞在する子どももいる。

 

 「危険な状況にいる子どもたちに、受け入れられない、とはいいません。私たちは政府の施設ですから」と、彼女は付け加える。「現在、特別な支援が必要な子が6人います。彼らに必要な場所を見つけてやることができません」。金曜日、RACはそのうちの一人を、精神科の療養施設に連れていく。

 

 RACには20人の寮母、6人のソーシャルワーカー、3人の料理人、10人の警備員がいる。全部で60人のスタッフがいて、先述の職員のほかに、看護師、医師、歯医者、栄養士と、子どもたちを路上からセンターに連れてくるレスキューチームがいる。

 

 「私たちには本来、39人の寮母が必要です。本当にスタッフが不足しています。そのなかでできることをやっています」。アントニオはそう述べたうえで、多くの学生とNGOがRACにボランティアとして協力したり寄付をしたりしてくれる、と付け加えた。

 

「バハイ・トゥルヤン」は、2月にエストラーダ市長に送った書簡の中で、RAC内で起きている次のことを改善するよう、要求している。

・RACスタッフによる非人道的な行為、拷問、いじめ

・子ども同士のいじめや暴力の容認

・家族と連絡ができないこと

・非行少年とほかの子どもを同じ部屋で生活させていること。

・定員超過状態、適切なサービスや支援の欠如

 マニラ社会福祉省は3月、改善を約束すると返事をした。しかし、状況は何も変わっていない。

 

 10月28日、「バハイ・トゥルヤン」は、RACに収容された経験のある子どもからのヒアリングを行った。これは、アジア人権委員会、NGO「チャイルドホープ」(私たちが支援している現地NGO)、ヴァーラニー財団、NGO「カンルンガン・サ・エルマ」、アサンプション大学の協力によって行われた。その話からは、飢餓、身体的虐待、性的虐待など、恥辱と苦痛に満ちた体験が明らかになった。

 

 10代の子どもたちは、暴力をふるうスタッフがいることを訴えた。実際に、RACでは、2008年と2010年に2件のレイプ事件が起きている。食事は米とスープのみ。時々調理されていない米や、傷んだものが出されたという。床で眠り、手で食事をし、バケツで用を足したこと、そして、いつも汚れた衣服を着ていることも訴えた。「水浴びをする時、私たちはみんな同じせっけんと、一本の歯ブラシを使っていました。私たちは一人20秒で水浴びを終えるように言われ、スタッフが秒数を数えていました」。

 

 こうした訴えを、アントニオとマニラ社会福祉省のジーン・ジャクイーンは、否定している。子どもたちはマットを与えられたが、好んで床で寝ていた。日用品を与えても、使わなかった。衣服を与えても、古いものを着ていた、とアントニオは話す。アントニオは子どもではなく、スタッフの側の過酷さを強調する。「食料品も、寮母の人数も、設備も制約があるなかで、私たちは最善を尽くしています。ここにはあらゆる問題を抱えた子どもたちが来ます。コミュニティの厄介者、病院に行かなければならないような病気を患っていたり、死にかけていたりする者。精神の問題を抱えた子ども、家族から捨てられた子ども。薬物依存症、軽犯罪に手を染めた子ども」。 

 

 アントニオは、寮母たちの研修の機会が不足していることについては、認めている。「全員が研修を受けているわけではなく、現場に入って仕事を覚えています」。子どもたちの間で起きるケンカについては、ふつうの家庭で起こりうる程度のものだと話す。「年上の子どもが年下の子とけんかをすることがあります。私たちはこれを許してはいません」。アントニオによれば、RACの予算は、1年間に400万ペソ(約1040万円)だ。食事についてもRACは、米に加え、魚、肉、野菜を提供しているという。「食べ物は不足していませんよ。洗濯機や扇風機など、電化製品が古くなっているのは確かですが」。2015年にはRACを改装すると、アントニオは言う。

 

(フレデリコは写真が撮られた一週間後、「バハイ・トゥルヤン」に引き取られ、医療サービスを受けることができた。検査の結果、多数の傷、栄養失調から、深刻な状況に陥っていたことがわかっている。)

 

 「バハイ・トゥルヤン」はこう述べている。「私たちの介入によって、この写真の子どもは今、病気の子どものための施設で、十分なケアを受けることができています。彼が少しでも早く回復することを願っています」。

 

 この議論は、今始まったことではない。RACのやり方は、何年も前から批判を浴びてきた。しかし少しも変わらなかったと、市民活動家は語る。フレデリコは、RAC、深刻な貧困サイクル、ネグレクト、虐待について、公の場で改めて考える機会を与えてくれた。しかし、フレデリコのフェイスブックの写真は誤解を招くものだと、アントニオは批判する。フレデリコの状況は実際は上向きだった、「バハイ・トゥルヤン」がRACで写真を撮った日はいつなのかも曖昧だ、と言う。「バハイ・トゥルヤンの気遣いには、感謝しています。でも、この写真のフレデリコは、あんまりです。フェイスブックへの投稿はあまりに不当です」。

 

 「バハイ・トゥルヤン」のスタッフとボランティアのなかには、外国人もいる。そのうちの多くがオーストラリア人だ。アントニオはその点を取り上げ、次のように言う。「彼らは、フィリピン政府に対して命令的すぎます。まるで、自分たちが政府の首をにぎっているかのようです。彼らは私たちの国にいるのに、まるで(フィリピン人ではなく)彼らこそが最善の方法を知っているかのように振る舞っています。正しいやり方、というものがある。もし本当に助けたいと思うのであれば、もっと前からやるべきだったでしょう」。

 

 現在、冒頭のフレデリコの写真は、1325回シェアされ、200を超えるコメントが寄せられている。人々は、子どもたちが路上生活の末に、本当に安全な暮らしを保障されることを求めている。

 

【翻訳元】RAPPER http://www.rappler.com/move-ph/73464-rac-manila-frederico

(2014年12月発行のニュースレターNo239より)