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ニュースレター

チャリティパーティ「へいわって、どんなこと」に参加して

2015/01/23 21:53:43 ニュースレター
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ストリートチルドレンを考える会

会員・岩崎由美子

 毎年8月になると、広島、長崎の原爆投下日や終戦記念日があるからか、戦争や平和についてのテレビ番組を見たり、イベントに参加したり、「平和」について考えることが多いのですが、今年は会が実施した絵本「へいわって、どんなこと?」の朗読と、非暴力ワークショップの2つを通して「平和」と「平和のつくりかた」について改めて考えることができました。

 

 まずは、絵本作家の浜田桂子さんが、中国、韓国の絵本作家とともに、3カ国12人で議論しながら創り上げたという「へいわって、どんなこと?」の朗読です。絵をスクリーンいっぱいに映し出し、ゆっくりと読んでいきました。

「へいわって、どんなこと?」

「きっとね、へいわってこんなこと」

 

 浜田さんが描いた「へいわ」は、 日々に喜びや自由があり、怖かったりイヤだったりすることに立ち向かえることでした。1ページずつめくり、じっと絵を見ていると、中にいる子どもたちや人びとの声が聞こえてくる気がして、まるで自分もその中にいるようでした。

 

 興味深いのは、ページをめくる度に、それぞれ特徴があるやわらかい絵が出てくることです。異なる手法や色あいには、3カ国の作家たちのバックグラウンドや「平和」のイメージが映し出されているようでした。作者たちが平和を願い、長い時間をかけて考え、一緒に作ったからこそ、この絵本は出版された3カ国はもちろん、地球の反対側にあるメキシコで読み聞かせをしても(メキシコツアーで訪ねた施設で読んだ)、共感を呼ぶことができたのでしょう。

 

 朗読が終わったあと、自分に問いかけてみました。「へいわって、どんなことだろう?」。いろいろなことが頭をめぐりましたが、これだ!という答えが思いつきませんでした。私は仕事柄、厳しい生活状況に暮らしていたり、紛争と隣合わせに生きていたりする子どもたちと会う機会が、頻繁にあります。しかし、「どうやったら状況がよくなるだろう」、「自分には何ができるだろう」という思いで頭がいっぱいになってしまい、「平和」がどんなことか、考える機会があまりなかったのかもしれません。

 

 平和が何かを考えたら、今度はそれをどうやってつくるかを考える時間です。メキシコのNGO「カウセ・シウダダーノ」がメキシコ連邦区とメキシコ州の中学生を対象に行っている非暴力ワークショップの一部を、実際に体験してみました。

「友だち同士など、人がよい関係を築くには、どんなことが必要か?」

「暴力とは何か?何が原因でどんな時に起きるのか?」

 

など、計5つの質問に対して、グループで話し合いました。よく考えると、この「人との関係」や「暴力が起きる状況」というのは、友だちや近所の人との関係から国同士の関係まで、どれについても言えることに気づきました。

 

 では、暴力が起きないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。この最後の質問には、「人の話を聞く」、「相手の身になって考える」、「違う価値観を認める」、「自分の意見を押しつけない」、「暴力以外の表現法を使う」、「一歩引いて落ち着く」など、いろいろな意見が出ました。

 

 言うのは簡単でも、争いや意見の相違があったときに実際にやるのは難しいことだらけです。「現実って厳しいなぁ、難しいなぁ」とため息をついていたら、ファシリテーターの工藤律子さんが、実際にメキシコで行われたワークショップで中学生がどう答えたかを、教えてくださいました。彼らは「話し合う」ことや「相手を尊重する」ことなどを、ワークショップで学んだようでした。驚いたのは、すでに学んだことを日常生活で実践し、暴力を使わずに問題を解決した子どもたちがいたことでした。メキシコの中学生たちの身の回りには、家庭内暴力やいじめ、若者ギャング団の活動まで、いろいろな形の暴力が溢れかえっています。そんな中、非暴力ワークショップで学んだことをちょっとでも覚えていて、暴力を使わない道を選ぶことができたならば、それは平和への一歩だと言えるのではないでしょうか?

 

 今日、この感想文に何を書こうかと考えながら、セミの声が響く道を歩いていると、突然背後から「ダダッ!!」と大きな音が響きました。心臓がひっくり返りそうになりましたが、振り返るとそれはただの工事現場のドリルの音でした。銃声ではなく、爆撃音でもない。私が小さい頃も、そして今も、日本の日常で大きな音がしても、身の危険を感じることはありません。でも、この私たちにとって当たり前のことは、実は世界中の路上で暮らす子どもたちや、今も紛争に巻き込まれている市民たちにとっては、当たり前ではありません。

 

 戦争の記憶が薄れ、再び戦争に向かって一歩一歩踏み出しつつある日本で、私たちの子どもの世代が平和に暮らせるよう、今、私たち大人が頑張らなくちゃいけないなと、改めて心に誓いました。

                    

☆絵本「へいわって、どんなこと」作者・浜田桂子さんからのメッセージ

 

2006年、私を含む日本の絵本作家4名が中国、韓国の絵本作家に、平和をテーマにした絵本の共同制作を呼びかけた。絵本は、感性に直接働きかけられる媒体なので、日本、中国、韓国の作家が連帯して平和絵本を制作できれば、未来を生きる子どもたちに大きな意味があると考えたからだ。

 

2011年4月、このプロジェクトで、私は『へいわって どんなこと?』を出版した。平和の概念を日常の場面にした構成で、見ひらきごとに、「せんそうを しない」、「おなかが すいたら だれでも ごはんがたべられる」などとつづく。

 

制作過程で、中国の作家や韓国の作家と、実に多くの意見交換をした。かつての日本による中国大陸への武力侵略や、朝鮮半島の植民地支配の歴史を改めて学び、直視し、加害、被害、双方の痛みを共有し、共感しようとする努力の時間でもあった。

 

韓国の作家からは、「浜田さんは、無意識のうちに、二度と悲しいことが起きないように平和でありますように、と、平和を被害からのみ捉えている」と鋭く批判もされた。この指摘は、私の平和認識に新たな視座を与えてくれたと思っている。そのような前代未聞の過程を経て、『へいわって どんなこと?』は完成した。

 

現在、この絵本は中国、韓国でも出版されている。日本でも、出版直後から読者の感想が寄せられ、さまざまな地域で子どもや大人たちと絵本を読み合い、「平和」について語る機会をいただいている。

 

 この会のスタディツアー「メキシコ・ストリートチルドレンと出会う旅」に参加した時も、メキシコの施設の子どもたちとこの本を読んだ。8〜9ページの「だって だいすきな ひとに、いつも そばにいてほしいから」が、一番好きと言った子が多くて、胸を打たれたものだ。

 

 昨年8月には、北朝鮮のビョンヤンの小学校でも読み、先生や子どもたちがとても喜んでくれた。この話を講演などで、日本の人に話すと、びっくりされるが、絵本の共感は、国や民族を超え、平和構築の道具のひとつになりうると、実感している。警戒、恨み、憎悪を生む武器使用の「集団的自衛権」とは、真逆である。

 

(2014年9月発行のニュースレターNo236より)