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「チョコラ!」鑑賞・座談会に参加して

2015/01/23 21:47:53 ニュースレター
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ストリートチルドレンを考える会

  船水 萠

 私が今年の夏に活動をしようと思っているフィリピンのNGOで、長期にわたりスタッフとして関わっていた日本人の方のブログを読みました。ブログの内容がとても興味深かったので、いろいろ話を聞いたりアドバイスをいただけたりできたらと思い、ふだんはインターネットで知った全く知らない人に連絡を入れることなどないのですが、思い切って連絡を取ってみました。その方が、「ストリートチルドレンを考える会」で活動をしている野口和恵さんでした。そして、今回、「チョコラ!」の上映会を知るきっかけになりました。

 小林茂監督が2006年に作成したドキュメンタリー「チョコラ!」は、ケニアのティカという地方都市のストリートで生活をしている男の子たちのありのままの日常、姿を映します。売れそうな缶や瓶を大きな袋にためて、回収業者からお金を受け取り、仲間と生活をしていく子どもたちの姿は、自立してたくましく世の中を渡っているようにも捉えられます。また、学校には行かずにシンナーを吸い、たばこをふかす子どもたちの姿は、いき場をなくした彼らが葛藤の中、たどり着いた現実だと感じました。また、「チョコラ!」に映し出される子ども同士が楽しそうに戯れる姿を見ると、例えば、私の近所の公園で元気に遊んでいる子どもたちと、何も変わらないと感じました。チョコラは、視聴者がストリートチルドレンのことをただ「かわいそう」と思わせるような、きれいに編集されたお涙頂戴系のドキュメンタリーでもなければ、ストリートチルドレンを取り巻く社会的構造に迫るような、多様な視点を特徴とするドキュメンタリーでもありません。「チョコラ!」は純粋に、子どもたちの生活を子どもたちに近い視点から映し出そうとするものです。そのようにまず、当事者の本当の状況を当事者目線で理解しようと努めることは、彼らの状況に同情する前に、また社会的構造や問題の原因を考える前に、大事なことだと思います。

私が「チョコラ!」を見て一番感じたことは、おとなと子どもの間にある、目に見えない大きな壁です。学校に行かないのはなぜかと先生から聞かれ、はっきりとは話しませんが、クラスの女の子がいじめるからと答える少年がいました。果たして本当にそれが学校に行かない理由なのでしょうか。「その問題なら解決したでしょ」と学校側は言いました。その場にいたおとなは、その少年を理解しようとする姿勢に欠けていたように感じました。また、家族がいるのにティカの町のストリートで生活している別の少年は、両親の前でなぜストリートでの生活を選ぶのかと聞かれ、「別に」と答えました。両親は、食事もあり収入もあり家族みんなが暮らすこの家になぜ、その少年が住みたくないのか見当もつかない様子でした。「別に」と答えましたが、何も理由がないとは思えません。理由を表現するのが彼には難しすぎるのでしょうか。それとも両親を含め、おとなを信用していないのでしょうか。学校での会話をとってもこの家族との会話をとっても、子どもたちにとって、身近にいるおとなは頼れる存在ではないことを感じました。

まずは周りにいるおとなが、変わる必要があると思います。親身になって子どもの話を聞き、子どもの持つ可能性を広げること。「チョコラ!」の中でそれを試みていたのが、ストリートチルドレンの保護を行っていた松下さんだったと思います。一度おとなから見放された子どもの信用を取り戻すには、相当な労力と時間がかかるでしょう。松下さんのように一人ひとりの子どもと向き合うことが、大人がまずすべき最初の一歩だと感じました。

ドキュメンタリーの視聴が終わった後に、「チョコラ!」の小林茂監督にスカイプで、参加者が質問をする機会が設けられました。ドキュメンタリーの撮影当時、監督自身も病気を抱える中でカメラを回したのにはどのような背景があったのかを、お話ししていただきました。また、ドキュメンタリーに出てくる子どもたちのその後を聞く質問もありました。時間が限られた中でのスカイプでしたが、実際に「チョコラ!」を撮影、制作した方とお話しすることで、映画に込められた思いが伝わったと思います。

スカイプの後は、参加者の皆さんで、工藤さん(考える会・共同代表)手作りのお食事をいただきながら会話を楽しみました。私は大学生ですが、参加者には社会人が多く、とても刺激的でした。本職以外でも、様々な場所でストリートチルドレンの支援に携わるような活動をしている人が多かったのは、皆職業や持っている経験は違うけれども、共通の問題意識があるからではないかと思います。職場や大学キャンパスなどの枠を超えて、共通の問題意識を持つ多種多様な人々が集まる今回のような機会を作ることは、より深い学びや新たな発見につながると思います。また次回、このような貴重な機会があれば、ぜひ参加したいと思いました。

(2014年8月発行のニュースレターNo235より)