フィリピン/出会う旅2018 募集は締め切りました。

フィリピンの募集は締め切りました。
次のメキシコの募集は、5月末から始まります。お楽しみに!

フィリピンの首都マニラとその周辺地域で、路上に生活している子どもたちやその家族、彼らを支える現地NGOのスタッフと出会う旅に出ませんか? 旅はあなたに、世界の子どもたちの現実をさまざまな角度からとらえ、私たち自身の現実と役割、未来を考える機会を与えてくれるでしょう。

旅の案内人は、27年間「ストリートチルドレン」の取材を続ける、ジャーナリス トの工藤律子とフォトジャーナリストの篠田有史です。

●日程 2018年3月1日(木)~3月8日(木)  ☆7泊8日
●費用 2人1部屋利用 126,000円 + 燃油サーチャージ(2017年11月現在4000円)※人数の都合で3人部屋になることもあります)
ホテルはPension Natividad利用予定。  
☆費用に含まれるもの
羽田~マニラ往復運賃(フィリピン航空利用予定)、空港使用料、空港税、宿泊費、昼食代6回分、現地でのグループ移動の交通費、現地NGOへの寄付、通訳・案内の経費。
※ほかの空港発着を希望される方はご相談下さい。
●旅行の同行・案内 添乗員はいませんが、案内役の篠田か工藤が、行きの羽田空港から帰りのマニラの空港の出発フロア入口まで同行、案内をします。
●定員 8名(申し込み先着順。最少催行人員6名)
●参加条件
・NGO「ストリートチルドレンを考える会」の会員または申込み時に会員になられる方(入会費3千円)で、帰国後、ニュースレターに旅の感想文を書いてくださる方。
●締め切り
定員に達ししだい、締め切り。*第一次締切は1月末頃。
●詳細日程(予定)
3/1(木)午後・羽田発  夜・マニラ着     (ホテル泊)
  /2(金)NGO訪問               (ホテル泊)
3/3(土)NGO訪問                         (ホテル泊)
  /4(日)ココナッツ・エコ・ツアー     (ホテル泊)
  /5(月)NGO訪問                      (ホテル泊)
  /6(火)NGO訪問                      (ホテル泊)
  /7(水)NGO訪問                (ホテル泊)
  /8(木)朝・マニラ発  午後・羽田着
●訪問する現地NGO(予定)
ストリートファミリーの子どもたちのためのデイセンターを運営する
★NGO「サルネリ・センター・フォー・ストリートチルドレン」
スラムヘの支援活動と施設運営をする
NGO「パンガラップ・シェルター・フォー・ストリートチルドレン」
モーバイルユニット車両を用いた路上訪問と施設運営をする
NGO「バハイ・トゥルヤン」
パヤタス地区のゴミ集積場にある
フリースクール「パアララン・パンタオ」
 路上訪問をするストリートエデュケーター派遣を中心に活動する
NGO「チャイルドホープ・エイジア・フィリピン」
●旅行呼びかけ
ジャーナリスト・工藤律子(ストリートチルドレンを考える会共同代表)
フォトジャーナリスト・篠田有史 (同会運営委員)
●お問合せ・お申し込み
(株)マイチケット
tel:03-3222-7800 または 06-4869-3444
fax:06-4869-5777
E-mail: info@myticket.jp
※会へのお問合せは、件名を「出会う旅」として
こちらへ → info@children-fn.com お気軽に。

メキシコ・ストリートチルドレンと出会う旅2017感想文

渡邉日菜子(大学生)
 首都メキシコシティのビジネス街では、日本と同じくらいの価格設定のカフェテリアが立ち並び、スーツを着たサラリーマンが早足で歩く。一方、地下鉄の駅では露店でお菓子やタバコを売る者、車内ではイヤホン、ガム、チョコレートを片手に一駅一駅車両を乗り換えては売り歩く者、「足を失って仕事を探している」、「子どもが病気のため薬代が必要だ」と身の上話をして物乞いをする者。そして街の片隅には、静かに毛布にくるまり薬物を吸うストリートチルドレンの存在があった。私が、スタディツアー中、彼らとの交流から感じたことは、意外にも「自由、優しさ、強さ」という言葉だった。

●自由さ
 ストリートチルドレンと聞くと、貧しい、かわいそうと想像するだろう。しかし、実際に子どもたちと関わる中で感じたのは、あくまで自分が限られた選択肢の中から、意志を持って選択してきた道を歩んでいる、それに満足して生きている子どもが多いことであった。しかし、子どもたちが路上生活を選択するのには、家庭内暴力や麻薬依存などの理由がある。その背景には、不安定な家庭環境、自分の利益だけを目的に勢力を広げる麻薬組織の存在などがある。

 NGO「プロ・ニーニョス・デ・ラ・カジェ」は、11歳から16歳の少年を対象に、洗濯、食事などの生活の基礎を身につけてもらう活動に加え、アクティビティなどを通して、新しい定住ホームでの生活を始められるよう、橋渡しの役割を担っている。ストリートエデュケーターは、路上で生活している支援対象に当てはまる少年に、施設に来てみようという意思が生まれるよう働きかけている。ツアーでは、ストリートエデュケーターに同行して、サッカーやカードゲームをして子どもたちと触れ合うことができた。

 彼らと関わる中で、以前施設にいたにもかかわらず、路上生活へ戻った子が想像以上に多いことに驚いた。やはり、路上から抜け出すまでの道のりは単純ではない。食事も提供され、清潔で安全な施設に通う決断をするのが難しいのは、なぜか。

 ケースによって様々だが、エデュケーターが説明してくれた主な理由は3つある。1つ目は、施設に入れば、路上のコミュニティから抜け出すことになり、仲間を裏切ることになるから。2つ目は、家庭から、家族から離れたくないから。3つ目は、施設のルールや規制に縛られたくないから。

 路上では、何にも縛られることなく自由に生活でき、麻薬を使うことを制限されることもない。そして、路上にいる仲間や家族と生活することができるから、施設への入居を決断できない、入居したとしても、また路上生活に戻ってしまうのだ。 路上で毛布に包まっている彼らの笑顔が輝いて見えたのは、自分の意思で決めた道を歩む自由さからなのか。

 路上生活する人々は、観光地に集まる。ローカルな土地よりも、お金のある観光客の集まる場所の方が稼ぎは良い。麻薬に溺れている者は、理性が失われ、お金を手にすると食事や衣服よりもまず先に、麻薬を買うようになるそうだ。彼らの間では麻薬依存、HIV感染などが理由で亡くなる者も少なくない。

 ツアー中に出会った路上生活をする50代の男性は、施設のスタッフと話し合っている途中でも、近くで昼食を食べている会社員を見つけた瞬間、物乞いをしに離れて行ってしまった。声は小刻みに揺れており、目は涙目、情に訴えるような表情だった。

 今の生活に満足して生きているように見える笑顔は、まぶしくもあり、私の心を痛めた。その環境を生み出した、現在も生み出している社会をうらんだ。路上生活をしている者にとって死はすぐ近くにあるというが、私がメキシコで出会った子どもたちはどんな未来を歩むのだろう。

●優しさ
 NGO「カサ・アリアンサ・メヒコ」のストリートエデュケーターと公園で、路上生活をしている子どもたちとサッカーをした。1時間半の間、へとへとになるまで遊び、その後はコンビニでスタッフが買ったジュースで皆で乾杯、子どもたちには毎回お菓子がプレゼントさせる。別れの最後には、ヨレヨレのワイシャツをきた男の子が、「お返しに」と、5人いた日本人参加者一人ずつにキャンディをプレゼントしてくれた。一つ足りないとわかると、自分がスタッフからもらったお菓子をくれた。彼は、どこかの会社で働いており、今日は家に帰るという。路上からの卒業生なのか、仲間の昔からの友人なのかは不明だが、帰る家があるのに路上も居場所の一つとしているということは、安心する何かがあるからなのだろう。

 ストリートエデュケーターがまわっている、もう一つのポイントでは、以前施設に通っていたが路上生活に戻ったという、19歳の少女に出会った。私たちが到着すると、すぐ「コーヒーを買ってくるわ」と、私たちをもてなそうとしてくれた。丁寧に説明し断ったにもかかわらず、結局、炭酸飲料を買ってきて勧めてくれた。彼女は薬物依存歴が長く、いつもやっていた単純なルールのカードゲームでは、ミスが目立った。スタッフが彼女をサポートしながらやっとのこと、ゲームを終えることができた。

 自分たちはボロボロの薄い服を着て、寒い路上で生活しているのにもかかわらず、私たちに何か与えようとしてくれる優しさに胸が熱くなった。このスタディツアーでなければ、ここまで近くで彼らの優しさに接することはできなかっただろう。

●強さ 私はツアー参加後、ツアー内で訪ねたNGOの一つである「プロ・ニーニョス」 で、ストリートエデュケーターのサポーターとデイセンターのスタッフとして、2週間のボランティアをした。ツアー中に、この施設のスタッフと、ある地下鉄駅のトイレの向かいで両親や妹と生活する、ジョナタンと弟のチュッチョとともに路上でカードゲームをして交流した。私はボランティアを通して、施設のデイセンターに通い始めたばかりの彼らに再会できたこと、二人の成長を見守れることを、うれしく思った。

 しかし、その期間中、メキシコでは、不幸にも大地震があった。当時、私はデイセンターで子どもたちに折り紙教室をしているところだった。食堂の太い柱の下に非難し、その後、広場で待機。幸い子どもたちもスタッフも無傷で、施設も物理的被害はなかった。

 震源地は、メキシコシティから南東に位置し、グアテマラとの国境に接するチアパス州沖合だ。メキシコシティからは遠かったが、マグニチュード8であり、想定外の出来事にみな驚きと恐怖で動揺していた。机を囲み、いつもより早めの昼食をとり、少し落ち着いたところで、子どもたちをスタッフが送っていった。

 地震後、2日間の休みがあり、デイセンターの活動が再開された。スタッフと普段の半分の人数の子どもたちとともに、地震についてどう考えるか、地震後どうしていたかを、輪になって話し合った。ジョナタンは、地震の当日深夜から朝4時まで、瓦礫に埋もれた人々を、弟と一緒に、一人が5人救出したという。

「人を助けることが、なぜかわからないけど好きなんだ。助けた人の家族がありがとうと言ってくれて、うれしく、幸せな気持ちになった。父親もボランティアをしていたので、自分もボランティアすることを決めた。自分のほかに助ける人がいなかったから、自分が助けたんだ」

 エデュケーターが、この体験がこれからの生活に影響を与えると思うかと質問すると、彼は、こう答えた。

「大きなきっかけになった。路上生活は何も生まない。将来は人を助ける仕事をしたいと思う」

 デイセンターに通う前の彼らを知る私は、地下鉄の駅からすぐのトイレの向かいで生活し、毛布にくるまっていつもデイセンターに向かいたがらない姿からは想像がつかない、彼らの勇敢な姿に驚かされた。私は彼から、日本では感じることのなかった、生きるエネルギーに溢れた力強さを学んだ。

●まとめ
 メキシコでは、政治家の汚職問題が後を絶たない。警察は路上で生活する者にとって、問題解決の救世主ではなく、問題の一つであるという。メキシコも日本と同じように、富裕層と貧困層の二極化が進み、一握りの富裕層が権力を持ち、多くの貧困層が人間らしく生きる権利を失っている。確かに、NGOの支援も有効だが、それでは追いつかないだろう。社会全体の仕組みを変えなければならないのではないか。

 ストリートチルドレンが、路上生活を選択し、薬物依存やHIV感染を原因に幼くして亡くなるのは、自分の利益を求め、欲望のまま生きる大人が生み出した環境によるものだろう。「自由、優しさ、強さ」を持つ子どもたち、未来ある子どもたちが幸せに生きる社会とは、どんな社会か。彼らが人間らしく生きる権利を取り戻さなければならない。

 現在、メキシコの低い賃金、アメリカ合衆国やメキシコ湾に接した地理的条件、自由貿易協定などを理由に、日系企業のメキシコ進出が著しい。2国間の関係が深まる中で、お互いの影響力は高まってゆく。グローバル化、新自由主義が世界で広まる中で、個人の経済的利益を求めるのではなく、皆が手を取り合い持続可能な社会を作り上げ、弱い立場に立たされた人々が人間らしく生きる権利を取り戻し、社会全体、地球全体で、それを包摂できるような仕組みを作り上げることが必要だと、私は考える。

 現在はスペイン語と国際関係を学んでいる大学三年生だが、将来、社会の一員として、できることは何だろう。スタディツアーへの参加は、大きなヒントを与えてくれた。

 最後に、このような素晴らしい出会い、経験を与えてくれたツアーを主催するストリートチルドレンを考える会の工藤さん、篠田さん、ボランティアの皆様、参加者の皆様に感謝申し上げます。


(2018年1月発行のニュースレターNo276より)