ダーウィン・ムニョス・ベラスケスくんは、13歳の少年です。16人兄弟で、彼は6番目に生まれました。グアテマラのウエウエテナンゴという地域の出身で、現在はケツァルテナンゴのカンテル市に住んでいます。彼の仕事は、山岳地帯のケツァルテナンゴと海岸地帯を結ぶ中距離バスの中で、ガムや飴などのお菓子を売ることです。ダーウィンくんに家族のことを聞くと、彼は目に涙を浮かべながら、「ママは胃がんで死んじゃったからいないんだ。ママが死んでからだよ、こんなに辛い思いをするようになったのは」。そう、語り始めました。「パパはすぐに別の女の人と結婚したんだけど、その人は僕に優しくないんだ」。今もその両親のもとに住んでいる彼は、途切れ途切れの声で、まるで心の内を表すかのように手を震わせながら、そう言いました。
ダーウィンくんの朝は、6時の起床から始まります。毎日、1時間半かけて歩いて「職場」となっているバス停へ行きます。ダーウィンくんはうれしそうな表情を見せて「僕は、1日に50ケツァル稼ぐんだ」と、教えてくれました。これは、約6、7ドル(700円前後)に相当します。そして、そう言い終わったすぐ後に、また何か思い出したかのように暗い表情をして、どんな環境で働いているかを語り始めました。バスの運転手や助手、そしてそこで働いている大人たちが、彼を叩いたり、ある時には彼を痛めつけようと4人がひとりずつが手足をそれぞれ持って、四方八方に引っ張ったこともある、というのです。このような暴力の恐怖に怯えながら毎日過ごしているわけなのですが、何が起こっても、実際のところ誰もが見て見ぬふりをし、警察さえも助けてはくれません。
彼は、このような日々の悲しみと苦しみを癒してくれる拠り所は、宗教にあると信じ、福音派のキリスト教会へ通っています。「パパとママが面倒を見てくれなかったから、僕は勉強しなかったんだ。学校には小学校2年生までしか通っておらず、できるのは最低限の読み書きだけです。そのような状況でも、神様がいつかきっと勉強ができるように助けてくれるはずだから、将来は牧師になるんだ」と、彼は大きな希望を抱いています。
グアテマラは中米の中でも、小さな子どもから10代前半の若者が最も多く働いている国だと言われています。最近の統計では、7歳から14歳までの子どもたちが50万人以上働いていることが明らかになりました。もし、18歳までの働く若者の人数を加えたら、その数字はおよそ100万人以上に跳ね上がるでしょう。このように働く子どもたちでも、その多くは学校に通っています。しかし一方で、ダーウィンくんのように途中で学校を辞めてしまい、仕事だけをするようになる子どもが多いのも、事実なのです。
(2016年11月発行のニュースレターNo262より)